長時間型のバルビツール酸系催眠薬であるフェノバルビタール
については出題履歴が多いです。
こちらの記事で過去問題の4問についてまとめて類題を出題し、
解説をしておきます。
バルビツール酸系催眠薬フェノバルビタールの過去の出題内容
問157 91回(2006年) フェノバルビタール 出題分野: 薬剤 予想正答率: 80%以上
フェノバルビタールは、グルクロン酸転移酵素やシトクロムP450
(CYP)等のいくつかの薬物代謝酵素を阻害する薬物である。
○かXか?
問164 92回(2007年) フェノバルビタール 出題分野: 薬剤 予想正答率: 80%以上
フェノバルビタールの代謝速度は、一般に乳児や小児等の方
が成人よりも速い傾向がある。○かXか?
問219 92回(2007年) フェノバルビタール 出題分野: 実務 予想正答率: 60%以上
調剤で、フェノバルビタールは炭酸水素ナトリウムに対して
配合不適となり、組み合せ散剤とすべきである。○かXか?
問150 93回(2008年) フェノバルビタール 出題分野: 薬理学 予想正答率: 40%以下
フェノバルビタールを過剰に摂取すると中毒症状を来すが、
その解毒には、一般に消化管での吸収を阻害する為に活性炭
を反復して経口投与する方法が用いられる。○かXか?
過去問の類題についての正答と解説
問157 91回(2006年)
フェノバルビタールは、核内で核内受容体と結合して薬物代謝
酵素を阻害ではなくて誘導します。
薬物代謝酵素としてはグルクロン酸転移酵素や、
シトクロムP450(CYP)等があります。
よって、答えはXとなります。
薬物代謝酵素を阻害・誘導する薬剤
薬物代謝酵素を阻害する薬物と、誘導する薬物について、少し
補足で説明しておきます。
薬物代謝酵素を阻害する薬物
主に、競合阻害をする薬物や、シトクロムP450(CYP)のヘム
鉄の第六配座子に結合することで「薬剤を酸化する能力」を低
下させる薬物等があります。
例 アゾール系抗真菌薬、シメチジン
薬物代謝酵素を誘導する薬物
代謝誘導をする薬物は、細胞膜を透過してから細胞質内で受容
体と結合して核内に移行したり、もしくは核内で核内受容体と
結合するケースが多いです。そして、環境化学物質は細胞質内
でAhR(Aryl hydrocarbon Receptor)と結合して核内へ移
行する場合が多いです。核内に移行した薬物は核内受容体であ
るCAR(Constitutive Androstane Receptor)や
PXR(Pregnane X Receptor)と結合して、mRNAの転写が促
されて薬物代謝酵素が合成されるのです。
核内受容体と結合する薬物の例としては、フェノバルビタール
の他に
カルバマゼピンやフェニトイン、リファンピシン等があります。
併せて知っておいて下さい。
問164 92回(2007年)
薬物の酸化活性については、新生児期から乳児期、そして小児
期にかけて増加し、代謝能力(代謝速度)が成人を越える場合
が多いです。フェノバルビタールやテオフィリン、フェニトイ
ン等の代謝速度は、乳児や小児が成人よりも速いです。
また、シトクロムP450(CYP)によって代謝される薬物の代謝
速度(代謝活性)は成人より2~3倍も速いケースがあります。
問219 92回(2007年)
フェノバルビタールと炭酸水素ナトリウムを配合すると、色調
が変化し、配合不適ではなくて配合注意になります。
つまり、配合することで変色して物理的な変化を生じますが、
薬効には影響がない組み合せで、
調剤する際には患者さんへ、見た目の変化があっても薬の効果
に異常等の問題はないことを説明(情報提供)すべきなのです。
よって、答えはXとなります。
因みに、炭酸水素ナトリウムと組み合せて配合不適となるのは
アスコルビン酸・イソニアジド・アスピリン等で、
これらは加水分解して湿潤してしまう(濡れてしまう)からで
す。また、炭酸水素ナトリウムとテトラサイクリン類の組み合
せは、炭酸水素ナトリウムが塩基性医薬品であることから分解
してしまって薬効が低下するので配合不可となります。
そして、炭酸水素ナトリウムとフェノバルビタールやセンノシ
ドは色調が変化することで配合注意です。
問150 93回(2008年)
フェノバルビタールを過剰に摂取して中毒症状になってしまっ
た場合には、一般に活性炭を何回か経口投与することで解毒を
します。この時、活性炭はどういう働きをするか?ですが、フ
ェノバルビタールが腸液や胆汁を通して腸内に排出され、そし
て胃液や唾液を通して胃の中に排泄されるので、フェノバルビ
タールを活性炭で吸着してしまい、
人体に再吸収されるのを防ぐ流れが作用機序になっています。
なので、答えは○となります。
※ 薬物による中毒症状については、
- 原因となる薬品
- 解毒に用いる薬剤
- 解毒のやり方
等をチェックしておきましょう。
中毒症状の原因物質と解毒する為の医薬品
覚えておきたい中毒の原因物質と解毒薬の組み合せをいくつか
載せておきます。参考にされて下さい。
有機リン剤 | アトロピン、プラリドキシム |
シアン化合物 | チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸アミル |
モルヒネ等の麻薬 | ナロキソン |
ヘパリン | プロタミン |
ワルファリン | フィトナジオン |
アセトアミノフェン | アセチルシステイン |
ベンゾジアゼピン系薬剤 | フルマゼニル |
Fe | デフェロキサミン |
Pb | エデト酸カルシウム |
Cu | D-ペニシラミン |
水銀、ヒ素 | ジメルカプロール |