催眠薬(さいみんやく)とは、中枢神経機能を抑制して自然に
眠れるようにするための薬で、一般に睡眠薬と同じ薬剤です。
超短時間型のバルビツール酸系催眠薬としては
チオペンタールとチアミラールの2個を知っておいて下さい。
どちらも90~100回(2005~2015年)の本試験で直接は
出題されていません。
目次
バルビツール酸系催眠薬の出題履歴
薬剤師国家試験の薬理学の分野では、過去90~100回
(11年分)の間にバルビツール酸系催眠薬は以下の
ように出題されています。
92回(2007年)問124の類題 出題分野: 薬理学 予想正答率: 60%以上
1)
ベンゾジアゼピン系薬とバルビツール酸系薬では、REM睡眠の
抑制作用は後者の方が強い。○かXか?
2)
バルビツール酸系催眠薬はGABAB受容体に結合して、
Cl–チャネルを開口させる働きをする。○かXか?
3)
短時間型のバルビツール酸系催眠薬であるペントバルビタールは、
長期間使用しても身体的に依存性が無くて安全である。○かXか?
92回(2007年)問240の類題 出題分野: 実務 予想正答率: 50%以上
その他に、92回の本試験では睡眠薬一般について問240で出題さ
れていて、類題は以下のようになります。
4)
飲酒しながら睡眠薬を飲むと、中枢神経機能を抑制する作用が
強くなるので身体に良くない。なので、併用しないように服薬
指導をした。正しいか誤りか?
催眠薬について、国試の出題基準で大切な4つのポイント
厚生労働省によると、薬剤師国家試験の出題基準で、
催眠薬については中枢神経系に作用する薬で、
- 代表的な催眠薬
- 薬理作用
- 作用機序
- 主な副作用
等をチェックしておくべきとされています。ここでは、
簡単に項目だけを整理して説明しておきますので、
今後、皆さんが演習経験を増やしていく中で意識して
下記の項目を、出題される形で身につけていって下さい。
A) 代表的な催眠薬としては、
- バルビツール酸系催眠薬(5~6種類)
- ベンゾジアゼピン系催眠薬(5~6種類)
- その他の催眠薬(ブロモバレリル尿素などの数種類)
などを国試対策では知っておく必要があります。
B) 薬理作用については、鎮静・催眠作用の他に
- REM睡眠の抑制作用
- 抗コリン作用
- 筋弛緩作用
- 脳代謝量の抑制作用
等を薬物毎に把握しておきましょう。
C)
作用機序については、国試に出題されるレベルの深さで良い
ので、個々の催眠薬について
どのような仕組みで鎮静・催眠作用が起こるのか?を理解して
おくべきです。
例えば、上記2)のバルビツール酸系催眠薬では、Cl–チャネルを
開口することで細胞膜の膜電位をマイナス方向に変化させて
過分極を起こし、それによって抑制性シナプスをシナプス後抑制
させて鎮静作用や催眠作用が生じることくらいの内容ですね。
D)
副作用については、
- 精神的・身体的に依存性があること
- 頭痛や、だるさなどの倦怠感を生じること
- 情緒不安定や神経過敏などの状態になること
等、薬毎に様々な特徴がありますが、上記の作用機序と同様に
国試での出題事例に基づいて必要な知識を覚えておけば良いです。
因みに、チオペンタールとチアミラールについて、出題基準の
項目を補足しておきます。
作用機序は、上記の出題基準C)と下記の解説2)を参照して
下さい。
薬理作用は、作用機序の他に薬効として、チオペンタールには
鎮静作用と催眠作用の他に、
用量に応じて脳代謝量を抑制する働きがあり、脳代謝量の減少
によって脳血流量と頭蓋内圧が低下します。
主な副作用は、循環系に対しては血圧低下や、用量によって
心筋収縮力を抑制する作用があり、
呼吸系に対しては、チオペンタールは呼吸中枢を抑制する作用
があり、呼吸の抑制は15分程度、続きます。
それから、チオペンタールとチアミラールは過去11回分の
本試験で直接は出題されていないので、
厚労省が指定している出題基準に照らして、バルビツール酸系
催眠薬としての特徴をざっと知っておくだけで良いです。
11回分の過去の本試験で出題されていない医薬品については、
今後も出題される可能性が低い訳で、細かい薬理作用や
作用機序、副作用等よりも、バルビツール酸系催眠薬として
の特徴をしっかりと覚えておくべきです。
過去問の類題についての正解と解説
1) ○
REM とは Rapid Eye Movement sleep の略で、REM 睡眠とは、
深く睡眠していて、
でも起きている時と脳波が同じ状態になっていて、覚醒時と同じ
ように眼球の動きが速くて、この状態では夢を見ている時が多い
です。レム睡眠は一般に、睡眠中に一定の周期で繰り返し現れ、
逆説睡眠とも言います。
2) X
バルビツール酸系催眠薬はGABA受容体のサブタイプとして
GABAB受容体ではなくて、
GABAA受容体とCl–チャネルの複合体の
ピクロトキシン(バルビツレート)結合部位に結合して、
GABA神経系の作用が増すことで、又は催眠薬が単独でCl–
チャネルを開口させます。で、過分極が起こって中枢抑制作用が
生じます。
3) X
ペントバルビタールは確かに短時間型のバルビツール酸系催眠薬
ですが、身体的に依存性を生じ易く、
現在では麻酔薬や催眠薬として人へ使用される機会は少ないです。
因みに、ペントバルビタールは呼吸を抑制する働きが強く、
麻酔に必要な量と致死量との差が少なく、臨床上での使用は危険
とされている面もあります。
4) ○
これは一般常識的にも分かりますよね。寝酒(ねざけ)という
言葉があるように、
お酒は一般に寝つけない時に眠る為に飲んだりすることもあり
ますが、その時に睡眠薬を一緒に服用したりすると、
場合によってはそのまま目が覚めないとか… 危険な状態になる
ケースもあり得るということですね。