長時間型のバルビツール酸系催眠薬フェノバルビタールは結構、
出題履歴が多い医薬品です。
頻出なんですね…。
この記事では5題、過去問の内容を参考にして類題の形でご紹介
します。
長時間型のバルビツール酸系催眠薬フェノバルビタールの類題4問
問155 93回(2008年) フェノバルビタール 出題分野: 薬剤 予想正答率: 80%以上
薬物代謝について、ワルファリンはフェノバルビタールと一緒
に使用することで抗血液凝固作用が増強する。○かXか?
問163 93回(2008年) フェノバルビタール 出題分野: 薬剤 予想正答率: 50%以上
血中薬物濃度モニタリング(TDM)について、フェノバルビタール
は線形薬物動態を示し、TDMを逐次、実施することが必要である。
○かXか?
問163 94回(2009年) フェノバルビタール 出題分野: 薬剤 予想正答率: 50%以上
血中薬物濃度モニタリング(TDM)が必要である
フェノバルビタールについて、
これは主に肝臓で代謝される薬物で、有効血中濃度域は
10~45μg/mlである。○かXか?
問215 95回(2010年) フェノバルビタール 出題分野: 実務 予想正答率: 60%以上
小児や高齢者の薬物治療でフェノバルビタールを使用する場合
に、体重当たりの投与量は一般に小児の方が成人(高齢者)よ
りも多い。○かXか?
問217 95回(2010年) フェノバルビタール 出題分野: 実務 予想正答率: 50%以上
医薬品の相互作用について、フェノバルビタールとワルファリ
ンを併用していて、フェノバルビタールを連続で投与すると
ワルファリンの薬物代謝酵素が阻害されてしまう為に、ワルフ
ァリンの作用が増強する。○かXか?
過去問の出題例についての正解及び解説
問155 93回(2008年)
フェノバルビタールとワルファリンを併用すると代謝誘導が起
こってしまうので、抗血液凝固作用は減弱(低下)します。
つまり、答えはXとなります。
問163 93回(2008年)
血中薬物濃度モニタリングとは、読んで字のごとくなのですが、
血中での薬物や代謝物等の濃度を測定して
患者さんに対しての薬剤の投与計画を決める為のモニタリング
手法です。
ところでフェノバルビタールは線形薬物動態を示し、線形コン
パートメントモデルを適用できる薬剤です。
そして、フェノバルビタールの体内動態は患者さんによって大
きく異なって個体差があり、その為にTDMが必要となります。
【参考】薬学英語にも、そろっと触れておく
尚、薬学英語は薬剤師国家試験の受験対策ではあまり必要ない
のですが、一応、参考までに書いておきます。
TDM = Therapeutic Drug Monitoring
治療薬物モニタリング、血中薬物濃度モニタリング
【参考】TDMが臨床の医療現場で価値をもつ為の3つの条件
- 薬剤の血中濃度と、薬理効果や副作用・相互作用の発現等
との間に相関関係があること - 薬理効果や副作用等を生じる分子種が特定されていること
(ここでの分子種は、未変化体や代謝された物質等のこと
です) - 扱う薬物について、信頼できる正確な測定方法があること
問163 94回(2009年)
フェノバルビタールについて、TDMが必要な薬剤であり、主に
肝臓で代謝される点は間違っていないのですが、
有効血中濃度域は10~25μg/mlとされていて、答えはXとなり
ます。
因みに、本試験の問題では、数値が異なっている場合の他に、
単位がさりげなく違っているケース等も散見されます。
ご注意下さい。
【参考】フェノバルビタールの主な中毒症状3つ
- 鎮静や催眠等の、中枢神経の抑制作用
- 呼吸麻痺を重篤に引き起こすこと
- 運動失調を来すこと
問215 95回(2010年)
フェノバルビタールについては、下記の記事に書いてあるよう
に、鎮静・催眠薬としてではなくて抗てんかん薬として用いら
れます。
そして、フェノバルビタールは小児の方が、体重当たりのクリ
アランスが成人よりも一般に大きく、消失半減期が短くなるの
です。つまり、体重当たりの投与量は小児の方が成人よりも多
くなって、答えは○となります。
クリアランスや消失半減期などの概念については下の記事で詳
しく説明してあります。併せて参考にされて下さい。
問217 95回(2010年)
上記の「長時間型バルビツール酸系催眠薬2つ」の記事で説明
しているように、
フェノバルビタールは薬物代謝酵素を阻害はせずに、誘導しま
す。ここで、連続の投与によって誘導される薬物代謝酵素は
シトクロムP450(CYP シップ)のことで、これは肝臓に存在し
ます。そしてワルファリンは抗血液凝固薬であり、
薬物代謝酵素シトクロムP450によって代謝されてしまいます。
つまり、フェノバルビタールとワルファリンを併用していると、
ワルファリンの代謝が進行することで、その作用が減弱してい
くことになり、増強は誤りで、答えはXとなります。
フェノバルビタールの過去問題での出題例はまだ続いてしまい
ます。
これは、かなり要チェックな医薬品ですねw