「2019年の第104回薬剤師国家試験から禁忌肢問題が導入
される」との一報を受けて、
下記 ↓ の前編の記事では薬クラの皆さんにとっては馴染
みの無い禁忌肢問題が一体どんなモノなのか?
その定義から解説して、それから臨時ニュースとして一緒
に報道された、2021年の第106回から国家試験の
出題項目や合格基準点等の出題基準が変わることの話題を
整理してお伝えしました。
後編のこの記事では、禁忌肢問題が既に導入されてきた医
師国家試験で禁忌選択肢の扱いが現状で
どのようになっているのか?を詳しく調べて、薬剤師国家
試験での受験対策のノウハウと併せてご紹介します。
目次
医師国家試験での禁忌肢問題の扱いは一般にどんな感じ?
医療系の国家試験では医師国家試験で昔から禁忌肢問題が
出題されています。
そこで、本来ならば担当領域が異なるお話ではありますが、
当サイト「やくがくま」編集部の担当者が
医学クラスタでは現在、禁忌肢問題ってどのように捉えら
れている存在なのか?
を詳しく調べてまいりました。禁忌選択肢の設問について
薬クラの皆さんがより具体的に
イメージし易くなれるように、医クラでの禁忌肢の問題を
ケース・スタディとして取り上げて説明します。
まず、医師国家試験では
- 担当患者が死亡してしまう医療行為
- 大きな障害が残ってしまう診療行為
- 倫理的に決して許されない臨床行為
等の内容に対して禁忌選択肢を設定しています。
これは、医師国家試験の本試験後に、厚生労働省の出題担
当者の先生方が各問題の選択肢の選択率を視て、例えば、
「この選択肢は選択率が10%未満で、尚且つ、明らかに禁
忌的な行為だから今回の国試での禁忌肢にしよう」
等と相談して決めると言い伝えられています。ただ、常識
的に見て明らかにアレであるような医療措置である
ので、厚生労働省の内部では、試験を実施する前に、受験
生の回答率とは関係なく事前に禁忌肢を設定している
と見る向きもあります。一応、建前上では医師国家試験に
おいても、
患者の生命や臓器の機能等を不可逆的に大きく損傷させる
ような臨床での判断や、
倫理的に明らかに誤っている考え方をしている受験生を医
師にさせない為に禁忌肢を予め設定している
という表現が伝達されてはいます。更にその他に、
「受験者の選択率が10%以上である選択肢は、禁忌肢には
ならないらしい…」
という噂(都市伝説?)が従来からまことしやかにあった
りもします。
ですが、厚生労働省が明示していないので禁忌選択肢を取
り決める過程がどうなっているのか?の実情は不明です。
そして、色々と調べてみると面白いのですが、例えば、
医師国家試験は薬剤師国家試験よりも
更に超ハードなスケジュールの試験です。
具体的な内訳は
- 薬剤師国家試験 ⇒ 2日間 345問 730分
- 医師国家試験 ⇒ 3日間 500問 920分
という構成になっています。
・・・ええ、これは紛れもなく実話です。
おそらく普通の薬クラの学生さん達からすると、これだけ
でも普通に震え上がってしまうくらいに過酷ですよね?
で、本試験の回毎に
「第○○回の医師国家試験では4問以上で禁忌肢を選択して
しまった受験生は合格させられませんダメです」
と合格基準が公表されています。
つまり、例えば4個の禁忌肢問題で地雷を踏んでしまった
医クラの人の場合には、
たとえその他の問題が満点であったとしても、合格にはし
てもらえないという、とても厳しいルールです。
それと同時に、厚生労働省からすると各回の国家試験で
- 禁忌肢の問題がどの科目に何問、含まれているのか?
- どの問題のどの選択肢が具体的に禁忌肢であるのか?
等については
試験後であっても完璧に頑なにシークレットです。
あと、上記のように
「医師として医学的に絶対に許されない診療の方法や、医
薬品の調合等の行為を禁忌とする」
という大義名分はありますが、どの選択肢を具体的に禁忌
指定するのか?の判断基準も圧倒的に非公開です。
因みに、診断の誤り(ミス)によって回答してしまう可能
性がある選択肢は、禁忌肢とはされません。
ご参考までに、医師国家試験での禁忌肢問題については、
かつて2007年6月頃に厚生労働大臣様に向かって直接に
「第95~99回の医師国家試験の禁忌肢問題がどれで、
禁忌肢が具体的にどれだったのか?を開示すべきです!」
と異議申し立てをなさった方(強者)がいらしたのですが、
その請求は完全にスルーされて却下になっています。
なので、医師国家試験における禁忌肢問題は何題あって、
どの選択肢が実際に禁忌肢であるのか?
その選択肢をどのような判断基準で禁忌選択肢と決めたの
か?定量的な根拠でもあるのか?ないのか?
抽象的で定性的な議論だけで決めてしまっているのか?等
のことは出題委員の方達だけが知り得る秘密であります。
でもちょっと想像してみると、
国家試験の全体が500問で、「禁忌肢問題(禁忌選択肢)
の選択数が3問以下」等という絶対基準である合格基準
が試験毎に明確に設定されています。
なので、割合としては500問のうちでその基準よりも多い
いくつかの選択肢が禁忌肢にされていると考えられます。
そして、興味深いデータとして下表 ↓ をご覧下さい。
「禁忌肢だけ」というのは「禁忌肢だけを理由として不合
格になってしまった人数」という意味です。
「合格基準」は、例えば第109回であれば、
「3個の禁忌選択肢までであれば、選択しても、それだけで
不合格にはならないでセーフです」
という意味です。
(2007年) |
|||||
第102回 (2008年) |
8535人 | 802人 | 91.0% | 3人 | 2肢以下 |
第103回 (2009年) |
8428人 | 760人 | 91.0人 | 6人 | 2肢以下 |
第104回 (2010年) |
8447人 | 909人 | 89.2% | 0人 | 3肢以下 |
第105回 (2011年) |
8611人 | 925人 | 89.3% | 0人 | 3肢以下 |
第106回 (2012年) |
8521人 | 833人 | 90.2% | 0人 | 3肢以下 |
第107回 (2013年) |
8569人 | 873人 | 89.8% | 非公表 | 3肢以下 |
第108回 (2014年) |
8632人 | 812人 | 90.6% | 非公表 | 3肢以下 |
第109回 (2015年) |
9057人 | 799人 | 91.2% | 非公表 | 3肢以下 |
この表によると大体、毎回の医師国家試験を8500人前後の
受験生が受けていて、
その中で禁忌肢という地雷だけによって逝ってしまう確率
は平均で僅かに1~2人とか、そんなレベルです。
という訳で、医師国家試験用の予備校業界では
「禁忌肢の設問だけで落ちる人は極めて稀でアレな人な
ので、禁忌肢問題は全然、気にしなくてよろしい」
と言われているのが実態なのです。
大々的にメディアに登場する禁忌肢問題ではありますが、
医クラの皆さん的には
「そんなの全然、気にしなくていいよ♪」
と通説的に言われている存在の問題だったのです。だから
要は
「常識的に見て間違えようがないような選択肢」が禁忌選
択肢にされていて、
医学クラスタの受験生さん達は全くそんなの気にもしてい
ないような存在の問題でしたというオチです。
それから、上述していますが、本試験の後であってもどの
問題のどの選択肢が禁忌肢だったのか?
の情報は一切、非公表ですので、受験生や予備校、大学等
の関係者によって問題を分析して、
毎回「この問題のこの選択肢は禁忌濃厚じゃね?相対的禁
忌っぽいよね?禁忌じゃないよね?」等と
講評しながら予想合戦が繰り広げられます。
ここで、薬クラの皆さんがよりリアルに医クラでの
禁忌肢問題をイメージできるように、例題を3個程、お見せ
しておきます。
ご参照されてみて下さい。
例題1 医師国家試験 第103回 H23 の問題
【問題】
【解説】
Sheehan 症候群の患者に甲状腺ホルモン薬を投与すると
死亡の可能性があり、選択肢 b は禁忌濃厚(ほぼ確定)
となる。
例題2 医師国家試験 第104回 B40 の問題
【問題】
【解説】
女性が妊娠している場合には、腹部エックス線撮影や造
影CTをすると胎児奇形を生じ得るので、選択肢 a と e
は禁忌濃厚である。
例題3 医師国家試験 第109回 F30 の問題
【問題】
【解説】
この患者は敗血症性ショックの診断となり、アドレナリ
ンの急速静注は心肺停止状態の患者に使用するので、選
択肢 b は禁忌濃厚と考えられる。
第104回以後の国家試験を目指す薬学生にとっての注意点
さて、最後に今回の記事の内容を受けて、禁忌肢の設問
に関係して
第104回(2019年)以降の薬剤師国家試験を受験する薬
学生の皆さんに
知っておいてほしい注意点をまとめておきます。概要を
先に記載しておくと、
薬剤師国家試験での禁忌選択肢に対しては
- 患者へ重大な損害を及ぼす危険性がある行為
- 各種の医療関係の法律に抵触してしまう行為
- 一般常識のレベルで倫理的に誤りである行為
- 公衆衛生上で極めて大きい被害等を来す行為
等を想定して内容を決めるとされています。
それと同時に、受験生がマークミス等の偶発的な誤りに
よって禁忌肢を選んで不合格になってしまう場面が
あり得ることを考慮して、複数の禁忌肢を出題する等し
て、禁忌肢の設問数と問題の質には配慮すべき
としています。禁忌肢問題について簡単に言うと
医クラでは誰も気にしないで良い存在くらいになってい
る禁忌肢の問題ではあるが、
薬剤師国家試験ではどんな状況になるか?分からず、各
回の本試験で例えば
どの科目で何問、出題されて、どんな決め方で禁忌肢を
設定して、合格基準はどうなるのか?
等の全体像がまだ未定であり、今後の続報に注目してい
きましょう
という感じに結論はなります。当サイト「やくがくま」
の編集部としましても随時、
禁忌選択肢に関連する話題は今後、注視して丁寧に取り
上げていきます。
おそらくは、国家試験の内容を見ると、医師国家試験よ
りもハードな展開にはきっとならないだろうと
考えられます。全体で345問の中で数題程度は禁忌肢問題
があって、合格基準として
数個の選択肢以下であれば地雷を踏んでもセーフで合格
という、
医師国家試験と似ている感じの制度になりそうと想定さ
れます。
合格基準を含めて禁忌肢問題の内容が確定して公表され
れば、
それによって受験対策の方法論も新たに確立していける
ことになります。
読者の皆さんには、続報にご期待を頂きたいです。
どうぞよろしくお願い致します。
医師国家試験と大体同じような感じの出題になるのかな?禁忌肢は、そんなに怖れる必要は無さそうだね…
結局、全体の中で何個くらい禁忌肢があるかと、その選択肢の内容は今後決まっていくんだね
その通りです
国試の問題全体で何個くらい禁忌肢を仕込んであるのか?どの選択肢が実際に禁忌肢なのか?
などの点については、医師国家試験と同様に非公表になると考えられます
ただ、「禁忌肢を踏んでもセーフなのは○個以下まで」という観点については、事前に試験要項として公表されそうです
禁忌肢って問題のことだと思ってたw 実際には選択肢のことで、肢単位でカウントされるんだね
禁忌肢って1個でも選んだら落ちるのかと思ってたけど、その選択肢をいくつか選ぶと不合格になるってことなんだ φ(・ω・*)フムフム…
特に104回(2019年)以降の国試を受ける人達には早めに知っておいてほしい情報です
今後、情報が解禁になりましたら、追って詳細を当サイトでもお伝えしていきます
薬学での禁忌肢問題も、明らかに常識問題って皆が感じるような内容が出題されるのなら良いのですが.. すこし心配です